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堀彩子さんからの"現場の声"

  1. 自分の"おもしろい"を誰かに発信したい!

自分の"おもしろい"を誰かに発信したい!

橋口:編集者の職業病ってあるんですか?

掘:シリアスな話になるんですけど、眠れない人は多いと思いますね。私は珍しい方で割と眠れるんですけど(笑)。
時間帯が凄く不規則になるので、ある日は朝まで起きてなきゃいけないし、別の日は朝一から取材に行かなきゃいけないしで、かなりサイクルがグチャグチャになるので。あんまり笑えない職業病になるんですけど。あとは、若干酒量が多い気がしますね(笑)お付き合いは多いですね。

橋口:出版業界に入ってから、最も影響を受けた先輩からの教えはありますか?

掘:講談社は、新入社員の時に指導社員っていうのが付くんですよ。同じ部署で、誰か一人編集長が指名した人が。私の場合は10歳違いの先輩だったんですけど、その人から教えてもらった事っていうのが、今も残っていますね。
その中でも、新入社員の時に一番「あぁそうなんだ」って思ったのが、やっぱり当時はどこか学生気分が抜けない所があったんですけど、編集の仕事って本当にアフターファイブみたいなのが全然無いし、プライベートな時間が本当に無くなっちゃうんですね。土日も「打ち合わせをしてくれ」って言われたら、しなきゃいけないみたいなのがあって、そこが上手く掴めないでいた時に、「仕事は全てに優先する」って言われたんですよね。「遊びの約束と重なっているとか、家族がどうかとか、そこはもう迷う所じゃない」と。仕事が全部優先だから、この仕事を始めたら、全てに優先するって言われて、「あぁそうなんだ・・・」って、新入社員の時は凄く衝撃的に思って。結構気ままな学生生活を送っていたので(笑)それは自分の中でずっと言い聞かせながらやってきた言葉の一つですね。

あとは、ちょっと矛盾するみたいなんですけど、その同じ人が言った言葉で、仕事相手に対してなんですけど、「仕事は取り戻せるけど、遊びは取り戻せない」って言われて、要は「飲みの誘いは断るな」っていう事なんですけど(笑)。一緒に楽しく飲んだり遊んだりした時間というのは、特に相手が作家の方だったりする場合は、絶対に何かが残って、信頼関係だったりだとか後に繋がっていって、純粋に打ち合わせだけの関係では生まれない物も生まれる事があるって話で。それは自分の誘いも断るなって事でもあるんですけど、そこは忠実に守りましたね(笑)。

橋口:仕事をしていて驚いたことはありますか?

掘:驚いたのは、あまりにも変な仕事の仕方をしている人がいることですかね。それこそ普通に夕方にやってきて2時間くらいで出て行って戻ってこない先輩もいましたし・・・
あとは漫画の生原稿を見た時は感動しました。スゴイきれいだったので。これもある意味衝撃的でした。

橋口:堀さんが今まで関わった作品や作家さんで、特に印象に残っている物はありますか?

掘:部署が変わるので、その都度なんですけど、最初にBE・LOVE編集部に5年間いて、大ヒットとはいかなかったんですけど、自分で興した新連載があって、それは亜月裕さんというベテランの作家さんと組んで作った連載だったんですよ。それをある意味全身全霊でやったので、漫画の部署の事を考えるとその事が印象に残っていますね。

文芸で言うとやっぱり、「一瞬の風になれ」という作品を、運良くというか、たまたま担当する事が出来て。あれも自分が思った以上に作品が大きくなって、色んな方に読んで頂いたので、忘れられない作品ですね。それとその前に、文芸雑誌にいた時からずっとやっていたのは、浅田次郎さんの「中原の虹」っていう中国の歴史小説なんですけど、それを雑誌編集部で連載を担当して、単行本の部署に来て単行本も作ったという事をやらせてもらって。もの凄く勉強になる仕事でもありましたね。

橋口:編集者の方は新連載をどんな風にして立ち上げているんですか?

掘:漫画の部署では、まずプラン会議がありまして。編集者がプランを何本か出す大きな会議が、年に1回位ですね。そこに皆で“バンッ”とプランを出して延々「どうしたらいいか?どれをやったらいいか?」というのを皆で、会議で話し合うんですね。私が立ちあげた連載はお受験物だったんですけど。題材がまずあって、作家さん選びは後からでもいいんですけど、ただ第1話のプロットみたいな物までは書いてしまうというか、講談社では漫画編集者が割とそういう事までするんですよね。

橋口:作家の方達とコミュニケーションを取るコツってあるんですか?

掘:結構シンプルな事で、やっぱり担当した方の作品をちゃんと読むって事が非常に大きいと思っているんですね。作品を読む事で、その方の考えている事を改めて知ることも多いし。
作家は作品の中にいると思うんですね。なので、やっぱりそれを丁寧に読んで理解した上で付き合うという事かなと思いますね。あとは普通のことだと思います。約束を守るとか(笑)

橋口:出版業界にはどんな人が向いていると思いますか?

掘:私はたまたま小説を読む事が好きで、今小説の仕事をしているんですけど必ずしもうちの会社にそんな人が多いかって言うと、全然活字の本なんて好きじゃないという人もいますし、一概には言いづらいんですけど・・・何かを発信したいというか、伝えたいとか、ある意味、宣伝屋っていうとおかしいんですけど、例えば自分が読んだ本が凄く面白かった時に「あぁ良かったな」じゃなくて、「誰かに言いたい!」みたいなタイプの方が向いているかもしれないですね。おせっかいかもしれないけど、人に薦めたいとかアピールしたいっていうのはあるかもしれないですね。

橋口:社会に出る上で、学生の内に身につけておいた方がいい事ってありますか?

掘:新入社員の時って覚える事一杯ありますし、仕事に圧倒されてしまうというか、案外、仕事一色になってしまうので。そうすると精神的にキツイ時期もあると思うんですよね。そういう時の為に、仕事に関係の無い趣味みたいなモノを学生時代から持っておくといいなって、今になって思いますね。

私は社会人になる直前位に、お茶を習い始めたんですけど、実は仕事が始まって凄い精神的にキツかった時に、全く関係の無い事を週に1回やるって言う事が、とっても精神衛生上良かったんですね(笑)仕事は凄く大事なんだけど、1個別の世界があると、仕事がキツイ時に楽っていう感じがあって、そういう物を学生の時に見つけておけると良いのかなぁって思います。なかなか仕事が忙しくなっちゃうと、それを見つけるスキも無くなってきてしまうような気がしますから(笑)

橋口:出版の仕事には“こんな楽しい事がある”と、学生達に向けて伝えたい事はありますか?

掘:色んな人に会えるっていうのはありますね。自分も普通にただの小説好きの学生だった時って、作家の名前って活字でしかなかったというか、そういう人達に実際に会ったり出来て、そして会って話をしてみるというのは、やっぱりインタビューを読んだりするのとは違った面が凄くあって、それがとても面白い事ですね。
私はこういう部署なので作家さんが主ですけど、雑誌の人だったらタレントさんに会う人もいるだろうし。とにかく人と会える仕事なのかなって思いますね。

橋口:堀さんは結婚されて、お子さんも産まれて、それでもまた職場に戻って来た理由は何だったんですか?

掘:産休・育休を取っていて、育児しながらずっと家にいたんですけど。それまでは、割と熱中するタイプなので仕事は一生懸命やってはいたんですが、「仕事大好き!」みたいには思っていなかったんですよ。
けど実際一回全く離れてみると、やっぱり気になるというか、小説の事とか色々と考える事があって、純粋に「戻りたいな」と思い始めたんですよね。それはありがたい事ですけど、自分の場所があるっていう感じなのかもしれないですね。育児していても家にもあるんですけど(笑)仕事という形での場所があって、人と繋がっているというか、それを通して沢山の人と繋がっているという楽しさなのかなって思いますけどね。

橋口:一生続けたいですか?

掘:そうですね。出来る限りやりたいと思ってます(笑)