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杉山豊さんインタビュープロカツ

  1. 社会に疑問を持った世代が社会をおもしろくする

社会に疑問を持った世代が社会をおもしろくする

牛窪:私は文学部なんですが、広告会社へ就職するのに学部は関係ありますか?

杉山:それは全然関係なかったよ。実際に僕らが面接する時は、本当に一切学部を見ないんですよ。その人の考え方や、人となりを見ていて広告のことは知らなくても良いんです。もしかしたら、君が面接でフランス文学について熱く語ったら「それがおもしろい」ってなるかもしれないし。

牛窪:面接はおもしろい方がいいんですか?

杉山:印象に残ることかな。例えばコンビニでお茶を売る時は、10種類並ぶ中からパッと見で「あっ!」と思わせて選んでもらわないといけない。だから広告会社だけじゃなくて、面接では目立った方がいいです。だからといって赤い服を着て来なくてもいいんですよ(笑)。

4年間の大学生活を楽しんだ人には、そういうオーラがちゃんと出てるからね。人間やってきたことはオーラに出るんだよ。だからそれが大事。

あと、これはどの企業でも言われていると思うけど、「どういう人を採るか?」って時に、「その人が自分のオフィスで席に座った時のことをイメージして、ピンと来るか来ないかで考えてください」って言われるんですよ。だから「この人は銀行に行った方が出世するんじゃないかな?」とか「この子は女子アナの方が向いてるんじゃないかな?」って思うこともあるんです。その子が優秀かどうかじゃなくて「広告会社に向いているかどうか?」っていう基準で見ていますね。

牛窪:広告会社に向いているのは、どんな人なんですか?

杉山:面接で受ける印象と、そもそも広告会社に向いているかっていうのは違うので、一概には言いづらいんですが、僕が広告会社に向いていると思う人は、物事を前向きに考えられる人。あと、トラブルに臨機応変に対応出来る人。つまり、“プランB”を用意出来ている人ですね。

あと、サービス精神がある人です。僕は、ウチの会社の女の子が髪型を変えたら、最初に気づく方なんですよ(笑)。そういう所をちゃんと見ていたりとか、知り合いや大事な人の誕生日をちゃんと覚えていたりするサービス精神です。あと、自分のこだわりを持っているのは良いんですが、ミーハーなことに対応できる人。「ワールドカップの応援で鳴ってるラッパ流行るんじゃないの?」みたいなことをすぐ結び付けられる人が良いですよね。

牛窪:杉山さんの社会人としての失敗談はありますか?

杉山:広告の仕事って、企業から預かった予算内で一番良いモノを作るべきなんですけど、若い頃って意外とそれを忘れちゃうんですよ。例えば「100万円でコレを作ってください」と言われて「良いモノはできたけど150万円かかちゃった」というのはありましたね。予算を預かるという意味の重さをわかってなかったんですね。

あと、ある紳士服メーカーに行った時、社長さんから「あなたはウチのスーツは絶対着ないでしょ」って言われて「は、はい・・・」みたいなことはありました(笑)。

牛窪:今は、私たち学生にとって先が見通せない時代と言われていますが、杉山さんから今の学生に向けてメッセージはございますか?

杉山:あのですね、今、ウチの会社で活きが良くて、この会社を面白くしているのは、最初の就職氷河期を経験してきた世代が多いんですね。やっぱり、彼らは最初に世の中がこういう状況になってしまった時に「自分たちで何とかしないと!」とか「上の人間がやってきたことが必ずしも正しくない!」というチャレンジャブルな精神を持ったんです。

世の中がみんなバラ色で動いて、良い時もあるんだけど、世の中にちょっと疑問を持っている人間が物事を前向きに考えた時、その“ジャンプ力”はスゴイ気がするんです。昔僕らの頃は、会社に入れば「何とかなる」と思ってたけど「何とかならないかも・・・」と思って、絶えず自分なりの打開策を考え、持つことは大事なんですよね。

あとは「自分はコレが好き」というモノを一つでも多く見つけること。博報堂の歴史の中でも「Jリーグ」を立ち上げたことは大きな出来事だったんですけど、多分あれも、すごいサッカーが好きな人がいて、「サッカーを何とかしたい!」と考えていたから実現したと思うんですよ。ウチの若い人間にも言うんですが、「自分が好きだ」というモノは言っておくと、それが仕事になったりするんですよね。

それと、社会人はいろんな人と会えるからおもしろいね。学生の時って個人的に好きか嫌いかでしか、友達になるかどうか決められないですよね?

でも社会人になると、個人的に好きか嫌いかなんかどうでもよくて、この仕事を一緒にやらなきゃいけない、ということで付き合っていくわけですよ。そうすると、一緒に仕事をして大好きになった人たちも「学生の時にコイツと会っても絶対に仲良くなれないな」という友達が沢山いるんです。人間を見る幅が社会人になると広がるので、友達も一気に増えますね。立場が介在して広がる人間関係って楽しいですよ。