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川口克己さんインタビュープロカツ

  1. ガンプラという存在を"共有"できる喜び

ガンプラという存在を"共有"できる喜び

輿石:入社してからすぐにガンプラの事業に携わられたんですか?

川口:最初はホビー事業部の営業に配属になったんですよ。手作りの方はそれこそプロみたいな形でやらせてもらってたんですけど、(模型)業界の事は実際に分からない。なので、配属になった時に営業で先輩から言われたのは「流通の事を含め、ちゃんと業界の事は勉強しなさい」って事でした。開発をやりたい気持ちは持っていたんですけど、「それは業界の事をちゃんと分かった上でやらないと」って事で。

そして2年目の年に、当時とてもお世話になっていた静岡の開発の部長さんが東京に異動で来られることが決まって、その時に開発に入ったっていう形です。でも、それも半年くらいなんですよ。その後、全くプラモデルとは関係のない部署に6年くらいいたんです。

輿石:そうなんですか!?6年間は何をされてたんですか?

川口:「とにかく新しい事やりなさい」っていう事業のプロジェクトで、6年のうちの4年くらいは「新規商材開発」という部署でした。なかなかそこで新しい商品は生まれてこなかったんですけども。

その後はバンプレストがグループになって、キャラクターのゲームを立ち上げるっていう時に、企画として2年間くらいやってました。そういう流れを経て、本格的にプラモデルに携わり始めたという形です。

輿石:それからは長年プラモデルに関わってこられたと思うんですけども、プラモデルの仕事を通じて、何か得たものはありますか?

川口:得たものっていうと、ガンダムっていう作品も30年前の作品なんですけども、よく「なんでこんなに続くの?」って聞かれるんです。いろんな要素があると思うんですけども、僕の中では毎年新しい商品なり事業なりをお客さんに提供して、常に新しいコンテンツであり続けているんですね。だから、そういう形でうまくお客様に新しい商品や情報を提供していけば、ちゃんと続いていける。

僕らバンダイの社員っていうのは、単純にキャラクターの商品を売るっていう感覚ではないんです。商品っていうのは、1つの情報だと思っているので、そういう意味ではコンテンツをお客様に提供しているんですよ。お客様と“共有する”っていう感覚が、ガンプラっていう商品にも通じていますね。

輿石:共有することで喜びを得られるってことですね。

川口:そうですね。やっぱり共有できた時に、一緒に楽しむという気分になれると思います。海外で販売する時も、言葉の壁ってあるんですけども、共有するという感覚は国境に関係なく感じていただけるっていうのを実感しています。単に商品を輸出するっていう感覚ではなく、共有することで海外のお客様に対しても関心を持っていただけてるんじゃないかなと思います。

輿石:自分が作ったものが、世界中の人と共有できるって嬉しいですね。

川口:やっぱり嬉しいですよね。開発に関わった人間ですと、実際に目の前で商品を買って下さるお客様を見るという事は、結構ドキドキする事なんですよ。自分が関わった商品にお客さんが並んでくれたって話を聞いた時は本当に嬉しかったですよ。やっぱり開発に携わっていると、そういうところに一番喜びを感じますよね。

輿石:考えた商品は絶対に商品として売り出せる訳ではないですよね。何か審査はあるのですか?

川口:審査っていうよりも、それが商品として本当に売れるのかどうかっていうのはみんなで検証するんです。これは僕らの経験として身につけてきた事なんですけど、自分でこれは絶対に売れるって思ってるものと、他の人が欲しいと思ってもらえるものとはやっぱり別なんですよね。だから、なんでそれが売れるのかっていうのをちゃんと人に伝えなければならない。

要はプレゼンテーションなんですけど、開発は営業に対するプレゼンテーションをする、営業は流通に対して。営業活動っていうのはプレゼンテーションですから、そのプレゼンテーションを行うためには、売れる理由っていうのを自分でちゃんと持ってないとダメなんです。そういう中で生まれてきた商品に対しては、みんなきちんと評価するし、逆にそこに至らなかった商品に対しては、他の方からちゃんと指摘が入る。で、それに対して「じゃあ、こうしていこう」っていうのをどんどん話し合っていく。

輿石:どんどん向上していくんですね。

川口:そうです。だから、これはネットも含めてそうなんですけど、情報っていっぱいあるじゃないですか。その中で情報をちゃんと自分で選んで、自分で考えて選択していかないとダメなんです。振り回されるだけになっちゃうので。考えることを止めた時点で、もうそこに対して先に進む事はできないんじゃないかと思いますね。

例えば、プラモデルって趣味嗜好のものなんで、「好きだから作る」みたいなとこがあるんですけど、最近多いのが、「今度ガンプラ作ってみたいんですけど何を買ったらいいでしょう?」って聞く方がいらっしゃる。それはとっても不思議な事なんですよ、僕らにとっては。好きなものだから買うんじゃないのかなっていうのがね(笑)それは結局、ガンプラが30年続いてきて流行ってるって事で興味は持っていただいてる、ただそれで何をしたらいいんだろうっていうのが分からない。

要は、「なんでみんな面白がってるんだろう?」とか、「それって本当に面白いものなんだろうか?」って。で、1回そこで踏みとどまって考えてみると、「やっぱこれは俺に合わないな」とかね、「面白そうだ」とか、そこで判断できる訳ですよ。だから人のいう事をちゃんと自分で聞き取った上で、自分なりに理解するって事を確実にやっていかないと、「浅いね」っていわれちゃいますね。

川口さんが作ったガンプラ