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坂本達さんインタビュープロカツ

  1. 坂本さんが旅で気付かされた“モノの見方”

坂本さんが旅で気付かされた“モノの見方”

田北:実際に旅に出られて、一番印象に残っているエピソードはありますか?

坂本:アフリカで、マラリアと赤痢を併発して倒れた時に、村にある最後の薬を使って、命を助けて頂いたっていう事ですね。村の医師が子どもの為に残しておいた薬を、僕の為に使ってくれたんです。それで、今の僕の命があるので、世界一周の旅が終わった時に、“命のある不思議さ”を凄く思いました。だから、最後の薬をくれたお医者さんと、助けてくれた村人達の事が特に印象に残っています。

田北:坂本さんは様々な国で色んな人達に支えられたりしていて、愛されキャラというか、坂本さんの特性かなって思うんですけど。そういうコミュニケーション能力は、どうやって身に付いたものなんですか?

坂本:年と共に自分の考え方も色々変わってきたんですけど、学生の時って、自分が一番という思い上がりがあったと思います。ある日、バスに乗っている時に、後ろに座っている女性の2人組が、「あの人、自分一人で生きているって思っているのよね」って、誰かの事を愚痴っていたんですね。

それが僕の耳に入って、勿論僕の事じゃないんですけど、凄くドキッとしたんです、「今、自分に言われたんじゃないか?」って。

丁度そういうキッカケかタイミングだったと思ったんですけど、「あ、これ僕に言われた言葉だ」と思ったんです、正直そう思っていた所があったので。

それから、自分本位になりすぎないように気をつけるようになりました。

あとコミュニケーションと言えば……村に行って、いきなり言葉も通じない人間が現れるとみんなビックリするんですけど、そんな時に僕がちゃんと挨拶をしないと相手にしてもらえない、けど、ちゃんと挨拶をして自己紹介をすれば、たいてい受け入れてもらえました。

だから、ちゃんと挨拶する事とか、よその土地にお邪魔しているという謙虚と言うか当たり前の気持ちとか、旅を続けていると忘れがちなんですけど、そういう感謝の気持ちを常に大事にしていました。さっき“特性”と言われましたけど、僕は転校が多かったから、周りの目が気になる特性もあると思います。

田北:繊細なんですね(笑)

坂本:いつも周りの目が気になります(笑)常に周りを見ている所が、結果的に良かったというか。

田北:色んな事に気が付いたり。

坂本:当時は人より先にいろんなことに気が付いてしまう事が嫌だったのですが、世界各地を訪れてやっぱり相手が何を大切にしているかにちゃんと気付いて大事にしないと、こっちも大事にはされない。「自分、自分」じゃダメなんです。

僕の転校の経験や、あまり気が強く無いという事が、結果として敵を作らないというか、特性の一つになったと思います。あと、自転車に乗っている人ってみんな挨拶するんですよ、すれ違う時に手を上げるんです、知らない人同士でも。それで、僕は人と会うとすぐ挨拶するんです(笑)。だから海外の村に行った時にこれが活きましたね。

田北:今も学生時代の話が出ましたが、坂本さんはどんな大学生活を送っていたんですか?

坂本:勉強もサークルもそれなりに楽しくやっていたんですけど、なんかこう、自分に納得がいかないというか、色々手に入れたつもりが虚しいというか……。先が見えていなかったっていう状態だったと思います、傍から見たら上手くやっているように見えたかもしれないですけど。自信が無かったというか、他人が良く見えて、「あの人はあんな能力がある」とか、「あの人はあんな進路を考えている」とか、周りの人と比べて不安になっていたんですね。

田北:大学時代にやりたい仕事とかはあったんですか?

坂本:えっと、学生時代も旅をしていたんですが、十数カ国歩いてきた中で、何かモノを作って、消費者に喜んで貰って、“ありがとう”と言ってもらえるような仕事をしたいと思っていたんです。

旅をしていて“来てくれてありがとう”と言って貰えて嬉しかったので。何かを提供して、“ありがとう”や“お金”を受け取りたいと。そういう意味で、日本のモノを作っている会社で働きたいと思っていました。

田北:世界一周のゴールは、やっぱり達成感がありましたか?

坂本:感謝の気持ちしかなかったですね。日々助けてくれた人達のおかげで走りきることができたので。

田北:帰国後、日本のことをどう思いましたか?

坂本:日本に帰って来た時は、何でも手に入るというか、望んだモノが実際に手に入ってしまうという感じがしました。スイッチを入れたら確実に電源が入るし、駅に行けばタクシーがいたり、電車が時間通りに動いたりだとか。僕の走った国ではほとんどなかった「万能感」。“なんでも出来る能力を持っていると錯覚してしまう国だ”と思いました。

あって当たり前とか、出来て当たり前とかいう風に思っていると、ちょっと上手くいかなかった時に、文句を言ったりだとか、自分の対応能力が無くなったりだとか、人間としての能力が欠けてしまうと思うんです。モノがある事とか、平和がある事とか、健康がある事とか、そういうのが実は当たり前じゃない。1日3回ご飯を食べられる事が当たり前じゃないという事を、日本の人が知っていれば、この環境をもっと活かせるなって。日本はチャンスがいっぱいある国です。

田北:旅から帰って来て、一番変わった部分は日本の見方ですか?

坂本:モノの見方全体ですね。生き、生かされている事とか、仕事がある事に感謝することとか、健康があることとか、以前と同じモノを見ても今は感謝できるっていうのは、変わったと思います。

田北:世界一周を終えて戻って来た時の周囲の反応はどうでしたか?

坂本:坂本:無事帰ってきたら、社長からは「変な病気持って帰ってないか」って言われて、ガクッとなりました(笑)。社長なりの愛情表現だと思いますけど。

田北:ミキハウスに戻った時に、次の人生のヴィジョンはあったんですか?

坂本:帰って来てからは、どうやって生きていけばいいか分からなくなって。4年間仕事をしていないので、後輩の方が仕事が出来るし、日本の事にも全然ついていけていないので、何から手を付けていいか分からない状態でした。帰国して10日も経たないうちに出社したので、荷物も解かないまま会社生活が始まって(笑)……